2026年3月7日(土)、認定NPO法人ReBitが主催する「LGBTQ/SOGIE Youth Forum 2026」が開催されました。UNESCO(ユネスコ)との協働プログラム「diverseeds2025」に参加した11プロジェクト・39名のユースリーダーが集結。半年間の試行錯誤を経て、彼らが自らのフィールドでどのような変革に挑んできたのか。当日の発言を余すことなく再現した、詳細レポートをお届けします。

diverseedsとは
diverseeds(ダイバーシーズ)は、LGBTQ分野に取り組むユースリーダーの挑戦を応援するプログラムです。
2018年の開始以来、「未来に多様性のタネをまこう」という想いのもと、これまでに60名のユースリーダーの取り組みを支援してきました。
2025年度は、UNESCO(国連の教育・科学・文化機関)と協働し、LGBTQに取り組むユースリーダーを応援しました。
取り組むプロジェクトは、学校や地域での居場所づくり、授業・イベント等の啓発活動、動画やコンテンツ制作・配信、パレードの開催など、LGBTQに関する取り組みであれば、テーマや形式は自由です。
2025年度は全国各地から 28プロジェクト・58名 の応募をいただき、そのなかから 11プロジェクト・8地域・39名 のユースリーダーを採択。2025年9月から2026年3月にかけて、助成総額105万円の資金的支援と伴走や研修等の非資金的支援を提供しました。
トークセッション1:ユースが変える、ユースが伝える
最初のセッションでは、大学、医療現場、そして地域社会といった、それぞれのフィールドで「伝える」活動に取り組む4団体のユースが登壇しました。LGBTQの学生も安心して学ぶことができるキャンパスを実現や安心して医療につながる環境をつくるために、いまユースが直面しているリアルな課題やこれからの社会に本当に求められる変化について話しました。

登壇者
- ナターシャ(自由なボックス)
- なつは(Safer Garden)
- ゆいこ(東北大学性を考えるサークルAROW)
- しおり(弘前大学LGBTQ+サークルぷらうど)
ファシリテーター
- 古堂達也(diverseeds2025メンター)
- まつり(diverseeds2025メンター)
古堂:まずはお一人ずつ、自己紹介と活動の紹介をお願いいたします。
医学生が挑む「インクルーシブ医療」差別への不安を安心へ

ナターシャ(自由なボックス):自由なボックスのナターシャと申します。よろしくお願いします。
まず、皆さんに一つお聞きしたいんですけど、病院に行く時ってどういう気持ちで行っていますか? 「楽しい!」みたいな人はあんまりいないですよね。いろんな不安を抱えて行っている方が多いかなと思っています。
多くの患者さんが不安を抱いている状態で病院に行く時に、もし「セクシュアリティについて話したらどう思われるんだろう」「差別されたらどうしよう」という不安がさらに重なっていたら、どうでしょうか。「ちょっと病院に行きたくないな」というふうに思いますよね。
実際に、LGBTQの当事者の中には、医療機関での過去の経験から受診をためらったり、必要な情報を医療者に伝えられなかったりする方もいらっしゃいます。ReBitさんの2023年の調査によるとLGBTQ+の当事者の8割以上が、医療従事者にセクシュアリティを公開できていない、安心して話せない。特にトランスジェンダーの方々だと、8割は医療機関で困難に遭ったことがある。そしてその4割は、さらに医療受診をしたくなくなったという報告があります。
このような背景には医療者側・医学部であまり十分な教育がされていないという報告、研究調査が実際にあります。このようなことを知って、私たちは医学生として「医療と多様性」について学び、伝える活動を始めました。
ここで少し自分の話をさせてください。私の名前はナターシャです。名前から分かると思いますが、マレーシア出身で、小さい頃からずっと日本で育っています。小中高はずっとインターナショナルスクールに通っていて、多様性を意識した教育を受けていました。でも、もちろんいいことばかりではなく、私も外国人として医療機関で差別を受けたり、嫌な思いをすることもありました。
そのため、このような経験を生かして、「医学生」というマジョリティ性、あとは「外国人」というマイノリティ性、この二面を両方生かしてインクルーシブ医療に貢献したいと考え自由なボックスを設立しました。
私たちの団体「自由なボックス」は、「誰もが安心して医療を受けられる社会」をビジョンに掲げ、学びと繋がりを通じて多様性を尊重した医療文化を育むことをミッションとして活動しています。現在は9名の医学生で活動しており、学術的な活動などもしております。
今後の目標は、今までは自分たちの大学の中でしか活動していなかったのですが、より多くの人に広げたいと考えているので、全国に活動の規模を広げ、全国に仲間を探すということを目標にしています。最後に、こちらが私たちのスローガンです。
「繋がる、広がるインクルーシブ医療」このスローガンの通り、今日は対話を通して皆さんと一緒に考えながら学んでいけたら嬉しいです。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
学生の手でつくる、居心地の良いキャンパスを育む「ガイドブック」

なつは(Safer Garden): safer gardenのなつはと申します。
私たちは2023年4月に、同志社大学でジェンダーに興味のある学生が集まり始まりました。2025年から「safer garden」という名前に名称を変えて活動しています。コンセプトは「同志社大学の学生一人ひとりが、性別や人種、国籍等を問わず花咲けるような大学づくりを目指す」として活動しています。
活動のテーマは主にジェンダーや性教育、最近は社会問題の交差性に気づいて、戦争や平和学習についても活動をしています。活動内容としては、メンバー間の学習会や読書会、居場所作りの活動、メンバー外に対しては映画祭やイベントの開催、SNSでの発信をしています。
今回のプログラムでは、「同志社大学での性的マイノリティに対する支援を増やしたい」という目的で行いました。問題意識としては、同志社大学での大学側の性的マイノリティの学生への支援が不足していること、教授等への知識へのアクセスが少ないことを問題視してこの活動を始めました。当初は大学の教職員の方に働きかけることを目標としていましたが、それがなかなか難しいことに活動の中で気づき、こちらのガイドブックを「学生向け」に作りました。どうぞよろしくお願いいたします。
だれもが尊重されるかかわりを考える4つのグランドルール

ゆいこ(東北大学性を考えるサークルAROW): 東北大学性を考えるサークルAROWの代表をしております、ゆいこといいます。
AROWは2019年の「フラワーデモ」という性暴力に抗議する活動から学生同士が集まって発足しました。私たちは「性を真面目に、オープンに」という言葉をキャッチフレーズに、名前の通り、性に関してあらゆるテーマについて考えるという活動をしています。
例えば、フラワーデモのきっかけである性暴力、性差別、LGBTQ+、ジェンダー格差、そして性教育についても活動しております。東北大学に限らず、他大学の学生や、仙台で性に関心がある若い世代のメンバーを中心に、留学生も含めて多様なメンバーで活動しています。
活動内容としては、お喋りするような定例会、読書会、あとは「みやぎにじいろパレード」や大学祭に出展したり。メンバーで、いろんなエッセイを書いて、ZINEを作っています。今年度は、第12回東北大学澤柳記念DEI奨励賞をAROWとして受賞しました。
今回のプロジェクトでは、「大学内のグランドルール作成とその普及」という活動を行いました。これは、私たちのサークルのメンバーの中で生まれた問題意識から始まったものです。
大学で公式に発表されている「多様な性に関するガイドライン」というものがあります。ただ、これは内容として少し事務的であったり、教職員の対応、例えば「事務的な窓口の場所」や「学籍の内容」を定めたものであり、実際に学生がどう行動したらいいのか、ガイドラインを読んだだけでは分かりづらい内容になっていました。
私たちは「大学の居心地の良さを作るためには、学生間の関わりが最も大事なのではないか」と考え、その上で学生同士の関わりについて定める「グランドルール」を作りました。AROWのメンバーから具体的なエピソードを聞きながら、4つにまとめました。
1. 性のあり方は人それぞれ。
2. 相手との境界線を尊重しよう。
3. そっと手を差し伸べられる人になろう。
4. 人の性のあり方を言いふらさない。
カードを作って学生に配布したり、イベントを開催し、この4つのグランドルールの周知を進めているところです。今日はよろしくお願いいたします。
ラフな交流からパレード参加、制作活動まで。ぷらうどがつくる大学内の居場所

しおり(弘前大学LGBTQ+サークルぷらうど): 弘前大学LGBTQ+サークルぷらうどのしおりです。
ぷらうどは青森県弘前市にある弘前大学にあります。留学していた自分の同期と一緒に2024年に発足しました。実は、過去にも弘前大学にはLGBTQのサークルはあったのですが、コロナ禍を経て全てなくなってしまいました。
その状況を見て、「自分たちで何かできることはないか」ということで立ち上げたサークルです。2025年には無事に公認サークルになることができました。今後の目標としては、サークルの存続が結構大きな課題となっています。
主な活動としては、月2回の「居場所作り」を行っています。集まって話したり、お菓子を食べたりするくらいのラフな感じですが、たまに映画を観たり、「青森レインボーパレード」のスタッフも行っています。
今回のdiverseedsでは、イベントを開催することを大きな目標としていました。パンフレットを作ったり、大学内の教職員や学生に向けたイベントを行ったり。あとは、フラッグを作ったり、Tシャツを作ったりといった制作活動もさせていただきました。
今日はどうぞよろしくお願いいたします。
『Z世代は寛容?』SOGIEを自分事にしていくために
まつり:みなさんありがとうございます。ここからはこの6人でお話をしていきたいと思います。早速ですが、今のユース世代は、LGBTQについて知る機会が以前よりは増えているかなと思うのですが、皆さんや皆さんの周りはどうですか? ゆいこさんからお願いします。
ゆいこ(東北大学性を考えるサークルAROW): 大人の世代から「いわゆる「Z世代」はLGBTQとかに寛容なんでしょう」「もう次世代は大丈夫だよね」みたいな認識をされていることが多いのかなと感じるのですが、Z世代のなかにいる立場として感じるのは「ユースの理解はものすごく表面的なものにとどまっているのではないか」ということです。私の高校時代の話なのですが、私の高校は「探究活動」という課題研究を積極的にやっている学校でした。もちろん、LGBTQやセクシュアルマイノリティについて研究するグループもありましたが、どこか「お勉強の対象」として扱われている感じがすごくしていました。
「社会問題の一部」としての感覚はあるけれど、「当事者が近くにいるよね」という感覚は全く共有されていない。実際に探究活動の発表が終わった後に、「実際にLGBTQって周りにいるの?」といった発言があったりして、今のユース世代の中で、本当に受け入れられているかと言われると、そうとは言えないのかなと思います。関心はあるけれど周りにいるとは思っていないというある種の無関心がある。そんな感覚を抱いています。
ナターシャ(自由なボックス): それについては、私もかなり共感できる点があります。私は今医学部にいて、周りは医学生ばかりです。やっぱりZ世代なので、LGBTQ+の存在や定義まではもちろん知っています。ですが、実際に診察室の中で、医師として目の前の患者さんがLGBTQ+かもしれないという状況になった時、適切に振る舞えるかと言ったら、そこまで多くの方が行動できるわけではないと思います。「配慮できているつもりではあるけれど、実際の状況下では分からない」という方が多い。
そこで私は医学生向けの講演を始めたのですが、自分の大学の先生に「LGBTQ+について教えたい」と提案した際、「うちの学生は国際的な大学で多様性に慣れているし、尊重した医療はできると思う。この授業って本当に必要なのかな?」と言われました。もちろん悪気のない疑問だと思うのですが、「多様性の尊重を自分たちはできている」と思っていても、実際は当事者からしたら嫌な思いをする、ということもあります。義務教育もそうですが、大学全体にもこの教育を広めていきたいなと思っています。
なつは(Safer Garden): 私はそもそも、小中学校の義務教育の中でSOGIEについて言及することがすごく大事だと思っています。私は中学校の時に実際にLGBTQについての授業を受けたのですが、紹介の仕方が芸能人の方を例に出したりして、「まあ、そういう人もいるよね」みたいな雰囲気で終わってしまって、自分事として考えられなかったことが、結構大きな問題だったなと思っています。
だからこそ、義務教育の中で「これはみんなに関わることなんだよ」と伝えていくことが大事だと思います。わたしの周りの友達のなかには「学校でLGBTQについて学びの機会がなかった」という子もいるなかで、やはり学習指導要領などの共通ガイドラインとして、LGBTQやSOGIEについて明確に記載されるべきだなと思っています。
ゆいこ(東北大学性を考えるサークルAROW): LGBTQ+の話題のなかで「当事者の声を聞こう」というふうに、「当事者」という言葉が強調されがちですよね。でも、SOGIEという言葉で考えれば、それは誰か特定の「当事者」の問題ではなく、全員が持っているもの、全員に関わる概念だと言えます。
「当事者」と「他者」を区別するのではなく、全員が自分自身のこととしてSOGIEを学ぶ。そうすることで、社会の全員が「当事者意識」を持つことができるのではないでしょうか。「解決すべき社会課題の対象」として勉強するのではなく、「私たちみんなの問題だよね」と捉えていく。それが自分への理解にもなるし、結果として周りの人への優しさにも繋がる。そんなふうに、SOGIEという言葉をもう少し大事にしていけたらいいなと思っています。
しおり(弘前大学LGBTQ+サークルぷらうど): 自分は教育学部にいたので、必修科目の中に「特別なニーズのある児童生徒への対応」という授業がありました。その中の1コマ分くらいはLGBTQ関連に触れることになっているんです。ただ、学内の他の学部を見ると、基本的には「選択科目」になっており、必ず学ぶ内容ではないというのが現状です。大学内の授業を増やすのはもちろんですが、もっと手前の高校や小中学校の段階から、当たり前に学べる内容になってほしいなと思います。
まつり: なるほど。学校現場や学部によって「タイミングが良ければ学べるけれど、そうでなければ差が出てしまう」というのは大きな問題ですよね。ナターシャさんは、実際に大学で授業をされてみてどうでしたか?
ナターシャ(自由なボックス): 2021年から、国際医療福祉大学の1~3年生を対象に、必修と選択合わせて合計3~4コマほど教えています。最初は「みんな聞いてくれるかな」と不安もありましたが、実際は質問がすごく多かったし、アンケートでも「本当は学びたかったけれど、どこで学べばいいか分からなかった」という声が本当に多くて。みんな勉強したいんだ、ということに安心したと同時に、自分のほうが周囲を少し甘く見ていたのかもしれない、と反省するほど良い経験になりました。
ただ、現状は私や自由なボックスのメンバーが個人的に教えているに過ぎません。医学教育モデル・コア・カリキュラムにはLGBTQという言葉が5回明記されています。しかし、実際に十分な教育を行っている大学は極めて少ない。私の希望は、各大学に教えられる人が一人でもいるということが最大の希望です。
古堂: 今の皆さんのお話を聞いていて思ったのですが、この5〜10年で「ダイバーシティ」「多様性」という価値観が重要だよねという共通理解は広がってきていると思います。でも、それがお題目的になっていて、実際どういうことに気を付けたらいいのかとか、日常の言動レベルまで落とし込んで、各自が自分事として考えるということがスルーされてきてしまっているように感じます。
もう一つ、「差別はいけない」という道徳的な価値観だけが普及された結果、「間違えてはいけない」という不安感を持った人も多いのかなと思います。その結果「わからないけど、聞いたりして傷つけたらまずいし聞けない」というすれ違いも感じます。
だからこそ、みなさんのように身近な存在として話が聞けることは重要だし、そういった活動を学生のみなさんが主体としてやっているのはまわりのユースにとっても学びやすいきっかけになっているんじゃないかなと思いました。とはいえ、みなさんのような熱心に活動に取り組んでいる人たちがどの学校・大学にもいるわけではないときに、個人に頼るのではなく、全員が学べる枠組みをつくっていくことが必要ですよね。さきほどなつはさんが言っていたような、学習指導要領に盛り込むということも今後重要になっていくと思います。
トップが変われば、取り組みも衰退?「仕組み化」という大きな課題
古堂:みなさんは大学のなかで活動されていると思いますが、現在の大学の様子も教えていただきたいです。
しおり(弘前大学LGBTQ+サークルぷらうど): まさに先生方の知識理解についても、追いついていないと感じる場面があります。大学内のイベントで、学生が当事者として気持ちを話している時に、教職員の方が「僕は当事者に会ったことないんですけど……」と話し出したり、基礎的な単語の質問から始めたりしていて。
質問自体は悪くないのですが、いざ先生がそういう質問をしているのを見て、学生としては「大学の先生でも知らないんだな」とショックを受けてしまう部分がありました。大人がもっと知っていれば、学生は少しでも楽に過ごせるのに、と感じたりもします。一方で、青森がいわゆる「地方で田舎である」ということもあり、現実として仕方ないのかなという諦めも感じてしまっています。

なつは(Safer Garden): 地域差や環境の差は、私も痛感しました。私は同志社大学で3年間勉強してきましたが、専門の教授が少なかったり、授業数が少なかったりして、3年で全て取り切ってしまったんです。その後、早稲田大学に交換留学をしたのですが、そこでは様々な分野のジェンダー専門の教授がいて、GSセンター(ジェンダー・セクシュアリティセンター)のような拠点もあり、環境がすごく充実していました。
でも、「東京の、特定の大学に通う人しか受けられない環境」であってはいけないと思うんです。地域に関わらず、開かれた場所で誰もがSOGIEに関する知識を受けられる環境を作っていくべきだと思います。
まつり: 5年前、10年前と比べれば力を入れている大学も増えてはいますが、まだまだ大学によって差がありますね。高校生が「大学は安心な場だ」と期待して入学したのに、職員の方が何も知らない場合ショックを受けてしまうと思いますし、通うこと自体がしんどくなってしまうと思います。
ガイドラインを作るのも素晴らしい活動ですが、本来は学生が頑張らなくても、どの地域、どの大学にもガイドラインがあり、相談窓口がきちんと対応してくれる環境があったらいいなと改めて思いました。
しおり(弘前大学LGBTQ+サークルぷらうど): そうですね。やっぱり、大学側から「理解があるよ」という姿勢を明確に出してもらえるだけで、学生は嬉しいと思うんですよね。
弘前大学は「弘前市LGBTQフレンドリー企業」に登録されていて、大学側も「登録されています」という発信はしているんです。でも、書類に書いてあるような内容が、実際にどこで、どう運用されているのかが私たち学生には見えてこない。例えば、「通称名が使えます」と明記はされていても、「じゃあ、具体的にどの窓口に行けば手続きができるんですか?」というところで止まってしまう。そういう「使いやすさ」の部分がまだ不透明だなと感じています。
困りごとがあった時に「どこの窓口に行けばいいか」がひと目でわかるマニュアルやハンドブック、ガイドラインが整備されていると、すごく親切ですよね。現状では、学生である私たちが大人に対して地道に働きかけていくしかないのかな、と感じています。
まつり: 地道な働きかけ、本当に大切ですよね。ただ、ガイドラインがある大学でも、内容は「教職員がどう対応すべきか」という指針に留まっているケースが多いです。学生同士のコミュニケーションや、学生が具体的に相談したい時の動線が抜けている、という指摘についてはどう感じますか?
ゆいこ(東北大学性を考えるサークルAROW): 大学生活は教員と生徒で作られているわけではなく、ゼミやサークルといった「授業以外の関わり」が大きなウェイトを占めていますよね。そこには当然、上下関係もあります。学生間でのハラスメントが起きる場面もたくさんありますし、実際にそういう話も耳にします。だからこそ、入学時の研修などで「学生同士の関わり方」についても大学側から触れてもらえるといいなと思います。
あと、これは「地方」という文脈で感じることですが、特に地方において大学は単なる教育機関以上の役割を持っています。文化資本が限られるなかで、大学が果たす役割は大きいと思います。学生だけではなく地域住民の方々にも大きな影響を与えるはずだからこそ、もう少し頑張ってほしいなという期待があります。


まつり: なつはさんは、実際に大学へ働きかけようとして苦労した経験があるそうですね。
なつは(Safer Garden): はい。今回のプロジェクトでは、同志社大学側に「性的マイノリティの学生への支援を増やしてほしい」と提言することを目標にしていました。でも、いざ動き出してみると、学生の身で職員の方々と直接やり取りをしたり、働きかけを続けたりするのは想像以上に難しいことに気付きました。
その経験から強く感じたのは、大学に「SOGIE専門の教職員」を最低一人は置いてほしい、ということです。専門の教授がいれば、私たちはまずその先生に助けを求めることができます。そこから先生を介して職員の方へと繋いでもらい、組織的な支援へと動かしていくことができるかもしれない。あとは、カウンセリングや学生支援の現場にSOGIEに関する専門知識を持った方がいてほしいです。
ナターシャ(自由なボックス): 私の大学の場合は、2021年から活動を始めて以来、少しずつ変化が生まれています。教授の方々から講義の依頼をいただいたり、教職員向けの研修用に「LGBTQ+フレンドリーな医学部になるためには」というテーマで動画教材を作らせていただいたりもしました。
特に嬉しかった変化は、4・5年生が行う「臨床実習」での対応です。病院実習は「髪を縛る」「指定のユニフォームを着る」といったルールが非常に厳しい。以前から、国籍や宗教に関しては「個別相談に応じます」という案内があったのですが、私たちの活動を見ていた担当の先生から「セクシュアリティや性の多様性についても項目を追加していいか」と相談があったんです。その年から正式に案内へ追加されることになりました。学生の活動をきっかけに、大学の公的なルールが変わったことを実感できた、すごく嬉しい体験でした。
まつり: 一方で、大学が変わるプロセスの難しさ、不安定さを実感したケースもあったとか。
なつは(Safer Garden): そうですね。私が入学した時は、初めての女性学長が「多様性」を強く打ち出していて、学生支援課の中にダイバーシティを推進するセンターもできたんです。でも、その学長が2年で交代してしまった。トップが変わると、それまで進んでいたものが一旦白紙になってしまったり、勢いが失われたりしてリーダーの交代によってこれほど左右されてしまうのかと痛感しました。
古堂: ありがとうございます。実は私も、今2つの大学で職員として働いています。一人の大学職員としても、今のお話は身につまされる思いで聞いていました。自治体や企業も同じですが、組織としての「方針」や「トップの判断」が、取り組みを大きく左右するのは事実です。
一方で、皆さんのように「安全な環境を作りたい」と願っている教職員も、全国にはたくさんいます。今回のdiverseedsにも多くの大学が賛同してくれていますし、大学でダイバーシティ推進に取り組む教職員のネットワークもあります。そこでは全国の大学が実践事例を共有し合っているんです。こうしたネットワークとも連携しながら、都市部だけでなく、全国のあらゆる規模の大学で、これらの取り組みが「当たり前の実践」として定着していけばいいなと思います。
おわりに
古堂:セッションも終了の時間が近づいてきました。最後に、ユースの皆さんから一言ずつメッセージをいただいて、終わりにしていきたいと思います。まずはナターシャさん、お願いします。
ナターシャ:はい。私からのメッセージは、主にユースに向けてなのですが、「もっと周りを信じてほしい」ということです。
実は、私がこの活動を始めた当初はかなり「怒り」に満ちていました。「周りは誰も味方がいない」と思い込んで、一人で戦っているような感覚だったんです。でも、実際に活動し始めてみると、意外と仲間はいるし、支援してくれる大人もたくさんいることに気づけました。そこに気づいてから、私は大きく成長できたと思っています。もし今、何かやってみたいと思っている子がいたら、自分の心と周りのことを信じて、ぜひ行動してみてほしいです。ありがとうございました。
なつは:私からはユースと大人の人に、それぞれメッセージがあります。
まずユースの人たちには、自分の感じた「モヤモヤ」を大切にしてほしいです。その違和感は、実は社会問題が形を変えて現れたものだと私は思っています。だからこそ、その感覚を無視せず、周りに伝えていくことを大切にしてほしい。そして大人の方、保護者の方や組織を運営されている方々にお願いしたいのは、ユースが抱えるその「モヤモヤ」を否定せずに、まずは聞いてほしいということです。そうした一人ひとりの感覚を大切にできる社会にしていけたらなと思います。
ゆいこ:私たちのように表立って声をあげたり、誰かに働きかけたりしたくても、環境や場所、さまざまな事情でそれが難しいユースが全国にはたくさんいると思います。それはとても残念で悲しいことですが、だからこそ、発言できる場所にいる私たちが、そうした「声に出せないモヤモヤ」を抱えている人たちの分まで受け止めて、頑張っていかなければならないと感じています。
私たちのように表に出ている人間は、いわば「氷山の一角」にすぎません。その下にある多くの声に想像力を働かせ、まずは目の前にいる私たちの声に耳を傾けてくれたら、とても嬉しいです。
しおり:私は「社会」に向けて伝えたいです。LGBTQの話が、会ったことのない誰かの話や「遠くの出来事」ではなく、誰もが当たり前に学べて、当たり前に口にできる世界になったらいいなと思っています。
「AB型の人がこれくらいいるよね」という話題と同じくらい、血液型を話すような感覚でラフに語り合える日常を目指したい。私自身、4年前に教育学部の授業を受けていた頃は「当事者なんて周りにいない」と思い込んでいました。でも活動を始めて2年も経てば、周りにたくさんの当事者がいることが分かったんです。意外と身近にいるんだ、ということがもっと多くの人に伝わったらいいなと思います。今日はありがとうございました。

開催レポート|後編
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