ReBit活動報告

〔diverseeds2025〕LGBTQ分野に取り組むユースリーダーシッププログラム「diverseeds」〜3団体の活動紹介〜

ReBitが行っているLGBTQ分野に取り組むユースリーダーシッププログラム「diverseeds(ダイバシーズ)」。2018年に開始し、これまでに60名のユースリーダーの取り組みを支援してきました。

「diverseeds」は、「未来に多様性のタネをまこう」という想いのもとにはじまった、LGBTQ分野に取り組むユースリーダーの挑戦を応援するプログラムです。2025年度は初めて助成プログラムが取り入れられました。動画やコンテンツ製作からパレードの開催まで応募のテーマ・形式は自由で、採択されたプロジェクトには、ReBitが資金面・学びの面の両方からサポートします。

2025年度は、全国各地から 28プロジェクト・58名 の応募をいただき、その中から 11プロジェクト・8地域・39名 のユースリーダーを採択させていただきました。

採択された11プロジェクトは、特定の地域や大学で活動し、より広い対象にサービスや取り組みをする団体で、プロジェクトのテーマも様々です。

今回は、団体としてスタートしたばかりの「CueFile(キューファイル)」、2019年から活動を継続させている「AROW(アロー)」、医療というテーマにチャレンジする「自由なボックス」の3団体にお話を伺いました。

「再会」をテーマにした3段階のイベント実施を目指す ー CueFile(キューファイル)

ーCueFileはどんな団体なのでしょうか

CueFile代表 高瀬さん(以下:高瀬さん)

CueFileは、名古屋を拠点に活動を始めた、10代・20代向けLGBTQ+イベントの実現を目指す「前向きなLGBTQ+コミュニティ」です。2025年の7月に立ち上げ、団体メンバーは現在私を含めて14人になります。

ーなぜ高瀬さんはCueFileを立ち上げたのでしょうか

CueFileを立ち上げたのは、まさにdiverseedsがきっかけでした。私は元々、東京の別の団体でLGBTQ+に携わる活動をしていました。そしてそこの代表の方から、diverseedsのことを教えてもらったんです。私はその団体の雰囲気がとても好きで、いつか地元名古屋にもこの雰囲気を持ち帰りたいと思っていました。でもどうしたらいいのか、何を頼っていいのかがわからない。そんな時にdiverseedsのことを知り、まずはこれにチャレンジしてみようと団体発足を決めました。

ーdiverseedsに応募いただいた「3段階のイベント」というプロジェクトについて教えてください

私たちはイベントの企画と開催を主な活動としていますが、その上で大事にしていることが2つあります。ひとつは、学んで気づいてアップデートできるイベントにすること。そしてもうひとつは、出会いだけでなく、繋がりまでつくるイベントにすることです。その実現のためには複数回のイベントをやることが効果的だと考えており、今回応募したのも3段階で1セットのイベントになります。

ー具体的にはどんなイベントなのでしょうか

まず1回目は運営メンバーで決起集会のようなイベントをやります。そして2回目がメインで、一般の方も集めて大きな交流会をします。そして3回目は2回目に参加してくれた方向けに、もう一度集まろうという「再会」のためのイベントをやります。この3回目のイベントが、私たちが応募したプロジェクトの大きな特徴になります。若者向けの交流会自体はLGBTQ+に限らず多く開催されていますが、私はそういったイベントで出会って仲良くなれた人、仲良くなりたい人との縁がその場限りになってしまうことを、とてももったいないと思っているんです。

ーなるほど。それで3段階目のイベントが重要になるわけですね

その通りです。でも今は、本当に3回だけでいいのかなと、考え直している部分があります。もっと会いたいなという気持ちがあるので、4回目5回目と増えていきそうな予感がしていますね。そしてCueFileのイベントが、参加者にとって出発点になって欲しいと思っています。「CueFile」の「Cue」には、「きっかけ」という意味があります。CueFIleのイベントで出会った方同士が、CueFileとまったく関係のないところでアクションを起こしてくれたら、とても嬉しいです。

ーでは最後に、今後diverseedsに応募してみたいと思っている団体にメッセージはありますか

応募した時は、まさか本当に採択されるとは思っていませんでした。私にとってdiverseedsは、自分がやりたいことを実現させる場所です。何かやりたい気持ちはあるけれど、何を頼っていいかわからない。そんなときに一旦飛び込んでみると、見えてくるものがあると思います。

大学内の多様な性に対するガイドラインを作る ー東北大学性を考えるサークルAROW(アロー)

ーまずは東北大学性を考えるサークルAROWという団体について教えてください

東北大学性を考えるサークルAROW副代表 加藤さん(以下:加藤さん)

AROWの正式名称は「東北大学性を考えるサークルAROW」といいます。2019年に初めて行われた「フラワーデモ」に参加したことをきっかけに、立ち上がったサークルです。フラワーデモのテーマになっている性暴力をはじめLGBTQ+、ジェンダー格差、性教育など、あらゆる性に関する問題に取り組み、幅広い分野で活動しています。現在は20名ほどのメンバーが在籍しています。

ー具体的にはどんな活動をされているのでしょうか

「日本に充実した性教育を定着させること」を目標に、そして「性をまじめにオープンに!」をキャッチフレーズに、サークル内の定例会、読書会、部誌製作、大学祭出店、性やジェンダーについてまとめた研究を発表する研究交流会、外部の方をお招きして講演していただくイベントの開催などを行っています。外部イベントに出展したりコラボ企画を実施するなど、学外に向けても活動してきました。こうした活動が評価され、第12回東北大学澤柳記念DEI奨励賞を受賞しました。

ー今回はなぜdiverseedsにご応募いただいたのでしょうか

diverseedsのことは、SNSのAROWのアカウントを介して知りました。AROWは2019年に立ち上がったサークルですが、私が入った時には少し活動の勢いが弱くなっているような感じがありました。そこで皆で一丸となって取り組めることがあればいいなと思い、diverseedsに応募しました。また私たちは仙台で活動をしていますが、他大学との関わりが多くありません。diverseedsの活動を通じて、他の学生や他の地域の方との横のつながりを作りたいと思ったのも、応募した理由のひとつです。

ーご応募いただいたプロジェクトの内容はどんなものですか

AROWでは、2021年に東北大学における多様な性の調査を行いました。アンケートやインタビューで東北大学の実態を調べ、その調査結果から、大学側に性について話せるスペースを作って欲しいと提言しました。それから数年が経ち、学生たちも入れ替わっている中で、今どうなっているのか。それを再度調査したいというのが、今回応募したプロジェクトの趣旨となります。そしてそれと並行するかたちで、大学内の多様な性に対するガイドラインをつくりたいと考えています。

ーそれはどのようなガイドラインなのでしょうか

今でも大学で公表されているガイドラインは存在するのですが、それはどちらかというと教職員向けなんです。私たちは、学生間での関わり方をメインとしたガイドラインを作りたいと考えています。他の大学のガイドラインに比べ東北大学のものはそこが弱いように感じるし、私自身も当事者の方々が過ごしやすい環境ではないなと思うところがあります。

ー生徒に向けた発信だけでなく、大学側に働きかけているのがAROWの大きな特徴のように感じます。

私たちはLGBTQ+の当事者を含め、どんな人でも過ごしやすい大学を作れればいいなと思っています。そのためにはもちろん大学側からの呼びかけも必要ですが、学生同士での行動も必要だと考えています。

ーAROWや加藤さんにとって、diverseedsはどのような存在ですか

はじめ、事務局の方はもっと事務的で距離の遠い存在だと思っていました。でも実際にお会いしてみたら、とても親身になって関わってくださったので驚きました。diverseedsはAROWにとって、一緒に走ってくれる先輩方のような存在です。自分達の力だけではできないようなことも、diverseedsの力を借りて実現していけたらと思います。

LGBTQ+フレンドリーな医療を全国に ー 自由なボックス

自由なボックス代表 ナターシャさん(以下:ナターシャさん)

ーまずは自由なボックスという団体について教えてください

自由なボックスのメンバーは、私を含め皆が医学生です。医学生として何か社会貢献がしたいと思い、たどり着いたのがマイノリティフレンドリー医療でした。マイノリティフレンドリー治療はまだあまり注目されていない分野で、教育や現場での意識が足りていないのが現状です。「学びと繋がりを通じて、多様性を尊重した医療文化を育む」をミッションに、この現状を変えるべく、私たちは活動しています。

ー具体的にはどんな活動をしているのでしょうか

学内外で医療系学生や医療従事者に向けて講義を実施するのが主な活動となります。活動内容について教授に相談したところ、「じゃあ講義をやってみないか」と言っていただき、このような取り組みが始まりました。また、日本医学英語教育学会・日本医学教育学会での論文発表や日本医学教育学会でのシンポジウム発表など、学術的成果も得られています。このように教育・医療の現場における理解促進と環境改善に継続的に取り組んできました。

ー今回はどんな目的でdiverseedsに応募されたのですか

私たちの団体のコアメンバー6人のうち、半分は2026年に卒業を迎え、研修医になります。今このタイミングで、蓄積してきた教材や経験を継承し、活動を長期的に継続・発展させるための基盤整備が必要だと考えました。そしてそのためのサポートを、diverseedsにお願いしたかったんです。

ー具体的なプランがあれば教えてください

運営体制の明確化や意思決定プロセスの構築に加え、WebサイトやSNSの整備による対外発信力の強化、全国の大学からの新規メンバーの募集を行います。また、セミナーや説明会を通して活動の認知度を高め、協力校や登壇機会の拡大も目指していきます。他の大学の医学生たちに、その大学で授業を

やってもらえたら、とても嬉しいです。

ーとても壮大でやりがいのあるプランですね

コアメンバーは1年以上臨床実習を経験しており、それぞれの目で色々なものを見てきました。病院には、本当に多様な患者さんが訪れます。性の多様性だけではなく、文化や言語だったり、身体的な多様性もあります。不快な思いをする患者さんを一人でも減らしたいというのが、私たちの思いです。

ーでは最後に、本記事をお読みの皆さん、diverseedsへの応募を考えているみなさんに一言お願いします

Go for it!私自身、この精神をすごく大事にしています。やらないで後悔するより、失敗してもいいからとりあえずチャレンジしてみてください。

CueFile、東北大学性を考えるサークルAROW、自由なボックスのみなさんが語ってくれたように、多様な未来への第一歩は、ユースリーダーたちの熱意と行動力から生まれます。「diverseeds」は、そんな未来のタネをまく挑戦を資金面と学びの面からサポートするプログラムです。

誰もが自分らしくいられる社会の実現に向けて、それぞれの場所で奮闘するユースリーダーたちの今後の活躍に、ぜひご注目ください。